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2DKの冷たい部屋には耳鳴りがしそうな位の沈黙しかない。
この部屋には何もない。今ではもう、何も。
「……ただいま」
「おかえり」
いつからあたしたち、目も合わせなくなった?
さして広くない部屋に距離を置いて座る、自然に計られる距離。
何も彼に伝えることがない。それは多分彼もそうで、同じ煙草の匂いに真意を隠す。狡い大人になったあたしたちはまるで臆病な犬だ。
「終わりにしよう」
その一言が言えないあたしたちは優しいんじゃなくて、争うことが怖いだけだ。
だからこうして、無為に時間を磨耗していく。
いつか終わる時がくるのを待ってる。
空虚な部屋には沈黙と紫煙だけが漂って、他にはなにもなかった。
+END+
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