第一章

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……迷彩パンツは動けない。 今まで喧嘩も、それなりにこなしてはきただろう……。 だが、次元が違う。 素人のそれとは全く別物、 本物の暴力に、格好だけの不良少年が立ち向かえるはずもない。 顎髭は倒れたままピクリとも動かず、金髪は完全に戦意喪失。 「おま…、いや…、あの…」 『こんなことして只で済むと思ってんのか!』 『舐めやがって! 顔は覚えたぞ!』 普段なら、こんな次の台詞もあるんだろう……。 しかし、使い古された言葉は吐かせない。 「どうすんだ…? まだやるか?」 俺は静かな声で云った。 「いえっ…、すいませんでした。勘弁して下さい!」 「女は連れてくぞ!」 「エッ…?、いやっ、ちょっと……」 煮え切らない返事。 「お前たちが、誰かにこのこと云ったりしなけりゃ、無事に帰してやるよ」 安心したのか、 「それだったらどうぞ、どうぞ!」 ……即答。 迷彩パンツの二つ返事に女は驚きを隠せない。 「いくぞ…、おらっ!」 女の視線は迷彩パンツに助けを求めるが、男たちにさっきまでの勢いはなく、主人に怒られた子犬のように縮こまったままだ。 それには目もくれず、俺は女の腕を容赦なく引っ張り、そのまま歩きだした。
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