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……迷彩パンツは動けない。
今まで喧嘩も、それなりにこなしてはきただろう……。
だが、次元が違う。
素人のそれとは全く別物、
本物の暴力に、格好だけの不良少年が立ち向かえるはずもない。
顎髭は倒れたままピクリとも動かず、金髪は完全に戦意喪失。
「おま…、いや…、あの…」
『こんなことして只で済むと思ってんのか!』
『舐めやがって! 顔は覚えたぞ!』
普段なら、こんな次の台詞もあるんだろう……。
しかし、使い古された言葉は吐かせない。
「どうすんだ…? まだやるか?」
俺は静かな声で云った。
「いえっ…、すいませんでした。勘弁して下さい!」
「女は連れてくぞ!」
「エッ…?、いやっ、ちょっと……」
煮え切らない返事。
「お前たちが、誰かにこのこと云ったりしなけりゃ、無事に帰してやるよ」
安心したのか、
「それだったらどうぞ、どうぞ!」
……即答。
迷彩パンツの二つ返事に女は驚きを隠せない。
「いくぞ…、おらっ!」
女の視線は迷彩パンツに助けを求めるが、男たちにさっきまでの勢いはなく、主人に怒られた子犬のように縮こまったままだ。
それには目もくれず、俺は女の腕を容赦なく引っ張り、そのまま歩きだした。
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