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若干抵抗するものの、
今の喧嘩を間近で見てしまえば、まともに抗う姿勢など保てるはずもない。
――今から、間違いなく犯される……。
殴られるかもしれない……。
蹴られるかもしれない……。
ひょっとしたら、
殺されるかも……。
そう感じているだろう、女の顔つきが、どんどん強ばる。
体は伝わるくらいガクガクと震え、真っ直ぐに歩けない。
裏通りに入り、男たちの姿が消える頃には、
「ウッ、ウッ……」
と、押し殺すような、泣き声まで聞こえてきた。
「どのホテルに入る?」
からかい気味に聞いてみた。
「……エッ?」
女は『ホテル』の単語に、過敏な反応をみせる。
右腕に女の体重が掛かる。
歩くどころか、立つことすらままならない。
俺は目の前にある、赤い看板のラブホテルを指差し、
「ここでいいな!?」
と合図した。
自動ドアが開くと、観念したのか
「痛いことはしないでね?」
と、涙声で哀願してきた。
「さぁ…、どうだろうねぇ……?」
俺は少し意地が悪い……。
それにしても…、どうにも俺はキレやすい。
――俺の短所はキレると、頭が真っ白になり、何も判らなくなることだ。
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