第一章

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若干抵抗するものの、 今の喧嘩を間近で見てしまえば、まともに抗う姿勢など保てるはずもない。 ――今から、間違いなく犯される……。 殴られるかもしれない……。 蹴られるかもしれない……。 ひょっとしたら、 殺されるかも……。 そう感じているだろう、女の顔つきが、どんどん強ばる。 体は伝わるくらいガクガクと震え、真っ直ぐに歩けない。 裏通りに入り、男たちの姿が消える頃には、 「ウッ、ウッ……」 と、押し殺すような、泣き声まで聞こえてきた。 「どのホテルに入る?」 からかい気味に聞いてみた。 「……エッ?」 女は『ホテル』の単語に、過敏な反応をみせる。 右腕に女の体重が掛かる。 歩くどころか、立つことすらままならない。 俺は目の前にある、赤い看板のラブホテルを指差し、 「ここでいいな!?」 と合図した。 自動ドアが開くと、観念したのか 「痛いことはしないでね?」 と、涙声で哀願してきた。 「さぁ…、どうだろうねぇ……?」 俺は少し意地が悪い……。 それにしても…、どうにも俺はキレやすい。 ――俺の短所はキレると、頭が真っ白になり、何も判らなくなることだ。
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