第二章

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部屋は非常階段から近く、 道路に面した一室を選んだ。 室内は広く、キングサイズのベッドと紫を基調としたデザインが、淫媚な空間を造り上げていた。 エレベーターを降りた辺りから、女の携帯電話が色々なメロディーを、ひっきりなしに鳴らし続けている。 「おいっ!」 癇に触った俺は、少し強めの口調。 「はいっ!」 「携帯よこしな」 今、俺の発する一言一言が、女にしてみれば、堪らなく恐ろしいだろう。 慌ててバッグの中身を探り出す。 なかなか見つからないのか、時間がかかる。 ようやく見付かると、小さな声で返事して、手渡してきた。 受け取ると、電源を落とし、無言でへし折った。 女は口をポカンと開いたまま、何か云おうとするが、途中でやめて俯いた。 俺は枕元に自分のバッグを置くと、ベッドに腰掛けて胸ポケットから煙草を取出し、ゆっくりと火を点ける。 顎髭の平手打ちで飛ばされた眼鏡はそのまま道路へ放置してきた。 ドアの前で立ち竦む女は、俯いたまま……。 後悔しているのか、表情はかなり暗い。 仕方ないのだろうが、この雰囲気は好きじゃない。
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