第二章

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………女? そういえば、名前をまだ訊いていないことに気付く。 「お前、名前は?」 「……本名?」 「どっちでもいいよ!」 別に知りたいわけではない。 ただ、呼ぶのに便利なだけだ。 なかなか答えない。 「安心しな。身分証見せろとか云わねぇから……」 「………アユカ」 「アユカ? ねぇ……。ま、いいか……」 偽名だろう。 「あの…、お兄さんのお名前は……?」 「ん……、進藤!」 ちっ! さっき云ったのに……、もう忘れてやがる 俺は上着をハンガーに掛け、ワイシャツのボタンを外した。 その仕草に、ようやく落ち着き始めたアユカの態度が急変する。 どうにもようすがおかしい。 騙すつもりだったにせよ、仮にも援助交際を云いよってきた女だ。 状況から考えて、セックスは逃れられないにしても、乱暴や、ましてや殺されたりしないと感じてはいるだろう。 浴室でシャワーを出し、再び部屋へもどると、アユカは腿をギュッと閉じ、堅く拳を握りしめていた。
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