第二章

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俺はアユカに歩みより 「なんもしねぇから、緊張すんな」 と、頭を優しく叩いた。 「今からシャワー浴びるから……、逃げたきゃ逃げていいが、できることなら逃げずにいてくれるか?」 「はっ、はいっ! もちろんです!」 信憑性はかなり低いが、構わない。 すぐ、ほかに移動すれば済む問題。 身体の汚れを落とせるだけでも儲けものだ。 コミックカフェにもシャワーはあるが、どうにも入る気がしない。 俺はけっこう潔癖症だ。 浴室と部屋は、マンションのように入り口そばの廊下で区切られていた。 大きなバスタブが据えられたガラス張りの浴室。 勢いよく溢れる熱いシャワーを全身に浴びながら、目を閉じ、静かに考えていた。 ……これまでのこと。 ……これからのこと。 あまり、いい考えは浮かばない。 暗闇を、闇雲に走っているような気分になる。 全身を洗い終えると、洗面所でズボンだけを履き、上半身裸のまま部屋に戻った。 アユカが目を丸くして俺を見る。
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