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何をそんなに驚いている?
裸か?
それとも、背中の刺青?
血の止まらない、この脇腹の傷も驚くよなぁ?
……まぁ、上半身の裸以外なら普通、驚いて当然だ。
「どうしたんですか? その傷?」
大きく前のめりになり、傷口を指差して訊ねる。
「……ちょっと、なっ」
“ちょっと”ではない。
縦に3センチほど、ポッカリ開いた傷口は、どうみても刺し傷にしか見えない。
「……大丈夫ですか?」
心配そうに訊ねる。
「あぁ……、だいぶ血も止まってきたし……」
「止まってませんよ!」
……たしかに
血はベルトまで滴っていた。
「病院行かないの?」
顔をしかめて訊く。
「……あぁ」
俺は傷口をタオルで拭いながら云った。
「行ったほうがいいですよ!」
「黙れ……」
俺は冷たくあしらった。
煩くされるのも、
しつこくされるのも好きじゃない。
不安そうにこっちを見るアユカの隣に座り、煙草をゆっくりくわえた。
しかし、確かにヤバいかもな……。
タオルが綺麗な赤に変わりだす。
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