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「ホテルだったらゆっくり寝れるよ?」
安っぽい笑顔を作りながら、軽く首を傾げた。
成る程、一理ある。
ラブホテルに一人で入るわけにも行かないし、何よりカモフラージュになるだろう。
「……幾ら?」
「2万円!」
女は悪怯れる様子もなく答えた。
ここだとばれるのも時間の問題だろう…。ある意味、都合はいいか……
僅かばかり良心が咎めたが、俺はこの女を利用することにした。
ショルダーバッグを肩から回し、一緒に店を後にする。
入り口を出ると女は腕を絡ませてきた。
馴れていないのか、動きがどこかぎこちない。
ラブホテル街は歩いて5分ほどの裏通りにあった。
歓楽街とはいえ、時間的に人通りは少ない。
周囲を警戒しながら、少し足早にホテル街へ向かった。
「いっぱいエッチなことしようね?!」
「う、うん。そうだね」
少し言葉に詰まった。
「お兄さん、仕事なにしてんの?」
軽く訊ねてくる。
「普通のサラリーマンだよ」
「ふ~ん……。だよね! お兄さん、真面目そうだもん!」
「お兄さん、名前は?」
「新藤……」
「下の名前は?」
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