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「雅人……」
思わず本名を答える。
二度と会うことも無いだろうし、問題ないだろう。そう考え、さして気にもしなかった。
他愛ない会話。
互いに興味などない、場繋ぎの会話が続く。
大通りの角を曲がると、ネオンが極端に少なくなり、急に暗くなる。
――突然、暗闇から複数の人影が伸びた。
若い男が3人、こちらに歩み出す。
「こらオッサン! なにやってんだ?!」
顎髭を生やした、かなり体格のいい男が怒鳴り散らす。
三人は目の前まで来ると、なおも威嚇した。
「てめえ…、誰の女に手を出してんだ!?」
顎髭の男が、顔を必要以上に近づけて叫ぶ。
後ろの2人も、ずっとこちらを睨みつけている。
さっきまで、甘えた顔で腕を絡めていた女も、すでに立ち位置は3人組がわ。
なるほど、美人局か。
普段の俺になら目も遭わせないだろうが、安物のスーツにヨレヨレのシャツを着た今なら、恰好の獲物に見えたのだろう。
「どうすんだ!? こら!!」
顎髭はなおも息巻く。
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