第一章

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「雅人……」 思わず本名を答える。 二度と会うことも無いだろうし、問題ないだろう。そう考え、さして気にもしなかった。 他愛ない会話。 互いに興味などない、場繋ぎの会話が続く。 大通りの角を曲がると、ネオンが極端に少なくなり、急に暗くなる。 ――突然、暗闇から複数の人影が伸びた。 若い男が3人、こちらに歩み出す。 「こらオッサン! なにやってんだ?!」 顎髭を生やした、かなり体格のいい男が怒鳴り散らす。 三人は目の前まで来ると、なおも威嚇した。 「てめえ…、誰の女に手を出してんだ!?」 顎髭の男が、顔を必要以上に近づけて叫ぶ。 後ろの2人も、ずっとこちらを睨みつけている。 さっきまで、甘えた顔で腕を絡めていた女も、すでに立ち位置は3人組がわ。 なるほど、美人局か。 普段の俺になら目も遭わせないだろうが、安物のスーツにヨレヨレのシャツを着た今なら、恰好の獲物に見えたのだろう。 「どうすんだ!? こら!!」 顎髭はなおも息巻く。
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