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チェーンを外し、ドアを開けた私は「澤村さん」に向けて笑顔で答えた。
一番綺麗に見えるであろう計算した作り笑顔で。
「来週の日曜ですね。わかりました。その日は出掛けて昼間は家に居ないので、気になさらないで下さい。わざわざご丁寧にありがとうございます」
私は彼から目を離さずに、優しく女らしい口調でゆっくりと言った。
もちろん声のトーンも一段と高くして。
完璧だ。
笑顔といい
話し方といい
声といい
自分の中の女らしさをうまく出せた。
絶対、絶対、今の私はいい女に映っている。
いや、そう見えなきゃおかしい。
ねえ、澤村さん。
今あなた私を意識したでしょう?
彼は、さっきと変わらないうっすら笑いジワが浮かぶ笑顔で私に言った。
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