序章

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静まり返った住宅街。 生ぬるい風が吹く夜道に、コツコツとヒールの音が響き渡る。 薄暗い街頭の光が、アスファルトを歩く足元を照らした。 もうすぐ夜の8時。 鍵をバッグから取り出し、私はマンションのドアを開けた。 ガチャンという、ドアが閉まる無機質な音が小さな玄関に響き渡る。 リビングに入り、白いソファーへと鍵を放り投げキッチンへと向かう。 手には袋に入ったお弁当。 会社からの帰り道、コンビニで買った。 弁当を袋から出しレンジへと放り込む。 とたんにうなり出しながら弁当は回転を始める。 薄いオレンジの光が、それを見つめる私の顔を照らした。 「疲れた……」 無意識にそんな言葉を呟いていた。
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