10904人が本棚に入れています
本棚に追加
/422ページ
鏡の中の自分を見て驚いた。
同時に血の気がサーッと引いてゆく。
だらしなくクリップで留められた前髪。
しかも似合わないのにおでこも全開。
乱れた巻き髪。
脂の浮いた顔。
グレーの上下スウェット姿。
鏡の中の私は、そんな自分を見て愕然としていた。
……忘れていた。
私、こんな格好してたんだ。
こんな、こんな汚らしい姿でいい女気取ってたなんて……。
情けなさと恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
――いや
まだ挽回は出来る。
来週の日曜、彼は引っ越して来る。
さっき咄嗟に昼間は出掛けてると彼には言ったけど、そんなのは嘘。
予定なんかあるわけがない。
ただ日曜日に家に引きこもってる哀れな女と思われたくなくて嘘をついた。
日曜は思い切りお洒落しよう。
そして彼の前に現れよう。
大丈夫。
まだ挽回出来る。
最初のコメントを投稿しよう!