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それなのに。
そんな私の思惑とは真逆に。
日曜の朝早くに行き交う人々はまばらで、目が合うのは犬の散歩をしているおばさんくらいだった。
「チッ」
舌打ちを、通り過ぎる車がかき消していく。
すれ違いざま、犬が私を見て吠えた。
小さなチワワ。
私は不愉快な顔を隠しもせず、犬を連れてるおばさんをジロリと睨みつけた。
「こーら、ミルちゃん」
おばさんの気持ち悪い声。
言う事を聞かずチワワは私を見てウーウー唸っていた。
なにがミルちゃんだ。
しっかり躾しなさいよ!
ムカついて転がっていた空き缶を思い切り蹴飛ばした。
「カーン」と突き抜けるような音が響き渡って、空き缶は宙を舞う。
その音に驚いた犬がキャンと鳴いた。
あースッキリした。
ふと腕時計に目を落とすと、時計は朝の8時過ぎを指していた。
マンションには午後8時に戻る予定。
あと12時間後、彼に会える!
湧き上がって来る感情を隠す為に、弛む口元を首に巻き付けたストールで覆った。
「着いた」
私はゆっくりと足を止めた。
そこは駅近くの小さなインターネットカフェ。
迷うことなく、私は足を踏み入れた。
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