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充分に温まった弁当と冷えたビールを準備し、リビングでテレビを見ながら今日の夕食が始まった。
家と会社の往復。
一人の食事。
毎日同じことの繰り返し。
突如として虚しさや孤独感が私に襲いかかる。
──こんなはずじゃなかった。
気付けば、私は33歳になってしまっていた。
ほんの数年前までは若くてチヤホヤされてたのに。
いや、若さだけのせいじゃない。
絶世の美女とまではいかなくても今まで幾度となく、『かわいい』『綺麗』と言われてきた。
それなりに自信だってある。
私はいい女だ。
ただ少し──年をとってしまっただけで……。
私はあの頃と何も変わらない。
今だって。
ほら、綺麗でしょ?
ふと、テーブルの上にある小さな鏡に目がいく。
鏡の中の私の顔。
目の下には青黒いクマ。
目尻の細かいシワ。
弛んだ頬。
くっきりと線を描く法令線。
血色の悪い肌。
そこには疲れた女の顔が映し出されていた。
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