序章

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私は自分の「女」の部分を取り戻したくてパソコンの電源を入れた。 ビールを一気に飲み干し、パソコンの前に座る。 そして、日課になったいつものチャットルームへとその手を動かし始めた。 さあ、今日も始めるか。 チャットでは色んな男と知り合うことが出来た。 私はチャットで知り合う男達に期待はしていない。 ろくなのがいないと思ってるから。 チャットは、私の失いかけた自信を取り戻す場所。 私はただチヤホヤされたいだけ。 可愛い可愛いともてはやされたいだけ。 私が「女」であると感じさせて欲しいだけ。 その為に私は全面に女の部分を出す。 男が好きそうな「女」を演じるんだ。 そう。 顔が見えない分、相手へのイメージは膨らむばかり。 勿論、自分の都合のいい方にね。 きっと私は、男達の都合のいいように解釈されたはかなげな可愛い女に写ってるんだろうな。 馬鹿よね。 こんな疲れた顔をしてるとも知らずに。 「ポン」 パソコンからメッセージを知らせる音が鳴る。 来た来た。 ログインしてすぐ、私宛にメッセージが送られてきた。
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