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感情は悲しみから怒りへと変わっていった。
私は、あの女から受け取った箱を開ける。
あの女の顔を思い浮かべ、綺麗にラッピングされた包装紙をビリビリに破いて、丸めてゴミ箱に放り投げた。
中身は入浴剤のセットだった。
淡いピンクのバラの形をした入浴剤。
可愛らしくて女らしい。
あの女が選んだのかと思うと、虫ずが走る。
私は、それを踏みつけて粉々にして捨てた。
ムカつく。
私はさっきライターを投げつけた壁を見た。
──この壁の向こうにあの二人はいるんだ。
嫉妬心がどんどん増幅してゆく。
羨ましくて憎らしい。
せつなさが心を支配する。
這いずるようにそこまで行き、私は壁に耳をあてた。
この向こうに、彼がいる。
壁にぴったりとくっつけた耳に、全神経を集中させる。
かすかに声が聞こえる。
何か話している。
──彼の声だ。
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