隣人

邪魔者

何を話してるの？

聞きたい。

聞きたい。

一ミリの隙間もなく壁に耳を押し付けたけど、内容までは聞き取れなかった。

ただ時折はっきりと聞こえるのは、あの二人の笑い声。
そして、カチャカチャとガラスがぶつかるような音。

多分、二人は食事をしてるんだろうな……。

押し付けすぎていた、耳が痛くなった。
鏡で見ると、赤くなっていた。

鏡に映る私。

目は真っ赤に充血して瞼は赤く腫れている。
美しく煌めいていたグラデーションのアイシャドーは、跡形もなく消え去っていた。

マスカラが落ちた目の下は真っ黒で、涙の黒い筋が何本も頬に線を作っている。

醜い私。
哀れな私。

それを見たら、また涙が溢れ出した。

こんなの私じゃないでしょ？

私はいつだって綺麗で可愛くて……。
そんな私を、男はほっとけないでしょ……？

……ただ、あの女がいたから。

私より早くあの人に、あの女が出会っていたから。

だからあの二人は結婚した。

ただ、それだけでしょ？

順番が間違ってたのよ。
彼と出会う順番が。

私の方が先に出会っていれば、絶対に恋に落ちて私達は結ばれていた。

隣にいるのはあの女じゃなく、私のはずだったのに……！

……消えてなくなればいい。

私の邪魔をした、あの女！