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私はそっと壁から耳を離し、立ち上がってクローゼットへと歩き出した。
服を脱いで、いつものようにスウェット姿になる。
着替えた私は、再び壁に耳を押し付けた。
……何か物音が聞こえる。
そして、テレビの音。
誰か帰ってきたんだ!
私の心臓が、ズキンと音を立てた。
キリキリと痛みだした胸を押さえながら、私は壁に密着させた耳に神経を集中させる。
誰がいるの?
あの人だろうか?
それとも、あの女……?
物音や歩く気配はするけど、そこにいるのが誰なのかがわからない。
イライラする!
私は、更にきつく耳を押しあてた。
「ポン」
──え?
その時、放置していたパソコンから聞き慣れた音が聞こえてきた。
これは、チャットでのプライベートメッセージの受信を知らせる音だ。
チャット仲間の誰かが、私にメッセージを送ってきたんだ。
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