序章

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パソコンの画面に表示されるメッセージ。 28歳の男、アキラからだった。 アキラ『ハル。待ってたよ』 「ハル」とは、私のネット上でのハンドルネームだ。 チャットを始めた際に悩んだ末、本名の「春川翔子」からつけた。 ハル『遅くなっちゃってごめんね。待っててくれたんだ。私も会いたかったからすごく嬉しい』 私はいつものように、偽物の女らしさを表現し、送信する。 会いたかったなんて微塵も思っちゃいない。 アキラ『嬉しいよ。俺もハルに会いたかった。今日はもう来ないかと思ってたよ』 ハル『ごめんね… 今日ちょっと嫌なことがあって… 落ち込んでたんだ。 でも、もういいの。 アキラと話してると元気が出てきたから…』 わざと少し含みを持たせたメッセージを送りつける。 予想通り、凄い速さで返事が来た。 アキラ『どうした?何があった? 俺で良かったら聞くから!』 それを見た私は鼻で笑う。 ―思った通り食いついてきた。
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