序章

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私は今日あった「嫌な事」をアキラに報告する。 多少の作り話と共に。 ハル『うちの会社の部長の事なんだけどね… 紳士的で頼りになる存在で、私も尊敬してた人なの。 社内の女の子からもすごく人気があって、自慢の上司だったんだ。 だけど今日…その部長からキスされそうになった… どうしようもなく好きなんだって言われて… 私、すごくショックで部長を突き放して泣きながら帰ってきたの… 今まで私の事そんな目で見てたかと思うと悲しくて… 尊敬してたのに。 もう私、どうしたらいいのかわからないよ…』 ――ありえない。 文字を打ち込みながら自分でも笑える。 『紳士的』 『尊敬に値する男』 『自慢の上司』 うちのクソ部長とは天と地程の違いだ。 打ち込むうち、自分の中で盛り上がりすぎて現実にあった出来事からかなりかけ離れてしまった。 その文章を送信した後、すぐさま私は謝罪のメッセージを送る。 ハル『ごめんなさい。 こんな事言うつもりはなかったのに… 私、いつもアキラに甘えてばかりだね。 こんなんじゃアキラに嫌われちゃっても仕方ないよね… 本当にごめんなさい』 控えめな私。 か弱い私。 ね、可愛いでしょ? これも計算の内。
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