序章

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私はその言葉に短く一言だけ返した。 『うん』 こんなこと、リアルで言われたらどれだけ嬉しいだろうか。 ネットなんて所詮顔の見えないバーチャルの世界。 またそれを都合のいいように利用してるのも自分。 優しい言葉も熱っぽいセリフも、全てはバーチャルで創られた「ハル」に向けられたもの。 「本当の私」に、こんな事言ってくれる人……きっと、一人もいない。 気付くとアキラから何度かメッセージが届いていた。 いけない。 考え込んでて気付かなかった。 順に読んでいく内、一つのメッセージに目がとまる。 アキラ『きっとその部長も若くてキレイなハルの魅力にやられたんだろうな』 ──ああ、そうだった。 忘れてた。 私はネット上では25歳だと偽ってたんだ。 25歳という年齢は決して若いとは言えないだろうが、33歳の私からすればそれは十分だった。
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