赤い傘

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あ……雨だ。 コンビニを一歩出ると、雨がパラパラと降り出していた。 真っ暗な空からとめどなく落ちてくる冷たい雨。 天気予報では夜中から雨だと言っていたのに。 勿論、傘なんか持ってない。 あーあ……。 さっきから私はついてない。 濃いグレーに染まってゆくアスファルトを見つめながら、私は深いため息をつく。 予想外の雨を前に、私はただ立ち尽くしていた。 仕方ない。 コンビニに戻ってビニール傘でも買うとするか。 再び、コンビニへと足を向けようとしたその時。 「一緒に帰りませんか?」 ──え? 私は、そう声を掛けられて顔を上げた。 その声と共に、目の前に差し出された赤い傘。 同時に、私の視界が赤に染まる。 「……あ」 驚きで言葉が詰まる。 帰ったと思っていたあの女が、私の前に立っていた。 「雨、降って来ましたね。傘お持ちじゃないなら良かったら入って行かれませんか?帰り道一緒ですし」 赤い傘を差し出しながら、女はニッコリと微笑む。 この女……。 まだここにいたんだ。 私は女の左手を見た。 白く細い薬指にはめられたリング。 それはまるで、その存在を主張してるかのように光り輝く。 そして、その手に握られたプリンの二つ入った袋が、忌々しげにユラユラと揺れていた。
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