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私が恐る恐る尋ねると、土岐警部は微かに頭を横に振った。
「どうやら、僕は系斗という人を勘違いしていたようです……。確かに、彼は逮捕して死刑にもならざるを得ないような人物でしょうが、鏑木さんはおそらく最後まで系斗を信用していたんですね。だから、今、系斗は鏑木さんの仇をうつつもりで永澤毅に会おうとしているんですよね………」
土岐警部はまた涙ぐみながらそう言うと、私は胸が震えて涙が溢れてきた。
「土岐さん………」
「………昔、愛美さんが…………茗さんのお母さんが亡くなった時のことは……?」
「もう、全部知ってます」
「…そうですか。………愛美さんが殺された通報は、おそらく系斗からでしょう」
「えっ…!?」
「駆け付けた時、系斗は幼いあなたを抱いて大きな木の下に佇んでいました。すぐに姿を消したけれど、僕には分かりましたよ。……愛美さんを救えなかったショックが大きかったみたいです………」
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