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青年は窓から離れ、フリークの正面に歩み寄る
警戒するフリークを余所に、青年は自己紹介を始めた
「俺、ファオラン
君は?」
今にも握手を求めそうな、にこやかさだ
(…)
「俺は、フリーク」
かつて出雲では、果たし合いの際に名を名乗る風習があったという
フリークはそんなことを思い出していた
「FREAK?…怖い名やな」
ファオランはケラケラと悪気なく笑う
彼はなおも無言のフリークに気付き、あぁ、と続けた
「あんな、久しぶりに行儀良い奴におうて嬉しいんよ」
彼は笑顔のままだったが、瞳だけ光った
「せやから、君は殺さないわ」
その一言にフリークはゾッとする
自分よりも小柄なこの青年に、勝てる気がしなかった
今まで何人殺めたかフリークは数えていない
だが、目の前の人物が、自分よりも遥かに上回る数の人間を殺めている確信はある
「最近なんやよう分からん事ほざいて一方的に斬りかかってくる奴、おるやんか」
ファオランは笑顔で続ける
「そういう奴ほど初対面の相手に向かってお前とかてめぇとか不躾なことを言うん
せやから今時フリークみたいんは珍しいねん」
屈託のない笑顔だ
対称的に、フリークは身動きもとれずにいた
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