broken heart

12/23
前へ
/100ページ
次へ
   そんな折り。  事情など一切知らない従兄弟・枝藤匡一郎さんが、我が家を訪れた。  早くに両親を亡くし、渡英するまでの数年間をこの家で過ごした……と聞いたものの。  一回り以上も歳の離れた従兄弟のことなぞ、自分の記憶にはまるで残っていない。 「大きくなったね」  懐かしげに笑みを向けられても、言葉を返せない自分が。  少しだけ。ほんの少しだけ、申し訳なかった。  
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加