broken heart

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   彼は。  大学在学中に、ニックネームの“Cid”名で幾つかのルポを書き、それが切っ掛けで、現在は翻訳を生業としている、と話した。  元より身内らしい身内のいない従兄弟の登場は、我が子を持て余していた親達にとって、渡りに船……の存在と映ったのだろう。  父親は事の顛末を、それもごく簡単に説明し、 「……せめて落ち着くまでの間、暫くこの子を預かっては貰えないだろうか」  と締めくくってのけた。 (落ち着くって?誰が何に落ち着くわけ?)  怪訝な顔で見る自分から、母親は黙って眼を逸した。  
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