悪魔の囁き、天使の笑顔

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その顔はメールの嬉しさを忘れさせる可愛らしい笑顔で俺はまた別世界へと連れて行かれる。 「どうしたの?」 そんな俺に智は不思議そうな表情をした。 「な、何でも無いよ、珈琲で良い」 ここ最近の俺は変で、智の笑顔を見る度にあり得ない事を考える。 (綾子に悪いよな) 俺はその度に罪悪感を感じて、綾子に申し訳無くなる。 「本当に素敵な店だったわね、また行きましょう」 綾子は美人だ、誰が見ても、でもそれは女性だから美人と言う言葉が似合うのだろう。 「そうだね、また予約しとくよ」 「うん」 腕を組んで笑いながら歩く、何度目のデートだろう。 「流兄ちゃん?」 「智」 二人で歩いて居ると男友達に囲まれて歩く智が前から声をかけて来た。 「流の兄弟?居たの?」 綾子は不思議そうな表情をして俺を見た。 「従兄弟」 智は嬉しそうに俺に近付いて来た。 「初めまして麻生智です」 にっこりと智が微笑んで綾子に自己紹介をする。 「初めまして大橋綾子です」 綾子もつられて自己紹介をした。 「綺麗なお姉さんだね、デートの邪魔しちゃダメだから行くね」 にっこりと笑って智が綾子を見て言う。 綾子は嬉しいのか先程より嬉しそうに笑った。 「智、あまり遅くなるなよ」 「うん!」 智は笑顔のまま先に歩く友人の元に行く。 「可愛い子ね」 さっきの言葉がよほど嬉しかったのだろうまだ笑顔のまま綾子は智たちを見て居た。 (智、けっこう友達が居たんだな) 俺は綾子の言葉などほとんど聞いて居なかった。 「じゃあ」 「うん、ありがとう」 俺と綾子は成人の男女としては珍しく清い交際をしてる。 俺は綾子をマンションの入り口まで送るとそのまま家に向かう。 (ホテルに行くのも断るし、家にも入れてくれないし俺ってまだ信用無いのかな) 俺は自問自答をして落ち込む、情けなく感じたり、本当に自分でも呆れるくらいだった。 「井上さん資料ありがとうございます」 仕事は好きだ、この就職難の時代なのに俺は運の良い事に希望の会社に入社する事が出来た。 「え、良いんです!いつでも言って下さい」 俺はだから仕事が大好きだ。 「大橋くん、少し良いか?」 「はい」 部長は誰もが羨む若い部長で、部長を目標にしてる者は多い、俺もその中の一人だ。 「なぁ、部長と大橋さん付き合ってるらしいぜ」 「マジで!それショック」 「無いだろ」 男の中でも噂話はある、部長と綾子の関係は噂話になって居た。
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