悪魔の囁き、天使の笑顔

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(覚えて無いって何か安心した) 俺は少しホッとした。 智が昨日の夜の事を思い出すだけで恥ずかしくなってしまう。 「流兄ちゃん?どうかしたの?」 智の顔を見ない俺を不思議に思ったのか智が俺の顔を覗いて来た。 「な、何でも無い」 やっぱり、俺は智の顔が見れなかった。 (ヤバイ、マジでヤバイぞ) 俺は自分の感情、自分の反応に泣きそうになる。 「流兄ちゃん、今度の日曜日暇?」 智は不安そうな表情をして俺を見てる。 「どうした?」 俺は心配になりやっと、智の顔が見れた。 「うん・・・・あのね、友達に遊園地のチケット貰ったんだけど一緒に行ってくれない?」 智は不安で一杯の表情をして居た。 「良いよ」 俺の返事で智は一気に明るい笑顔を見せた。 「ヤバっ!ごめん、智後は帰ってからな」 俺は時計の時間を見て一気に青ざめた。 (ギリギリ、間に合うよな) 俺は全力疾走で会社に向かう、遅刻なんてシャレにならない。 (つ、疲れたぁ・・・・珈琲飲も) 俺はデスクに向かう前に給湯室に向かう。 女性社員の声が給湯室から聞こえて来る。 (朝から噂話か・・・・元気だな) 俺はその声を聞いて少し呆れた。 「でも、呆れた綾子」 (綾子居るんだ) 綾子が居る事を知って俺は入るのを戸惑った。 「何がぁ」 いつもと少し違う感じがした。 「だって、注目株の江崎くんと部長比べてるんだもん」 俺は動けなかった、俺の名前が出て驚いたのもあったが比べると言う意味が理解出来なくなって居た。 「だってぇ、江崎くんは顔良いし、将来性はあるけどぉ、確実なのは部長なのよねぇ」 女子高生が話す様な口調、でもそれは確実に綾子の声で俺は愕然とした。 「えっ!それ指輪!」 「良いでしょう、昨日プロポーズされたんだ」 俺は逃げ出した、綾子に問い詰める事も何も出来ずに俺は逃げ出した。 (最悪だ) 泣きそうな気持ちになる、悔しくて、苦しくて、初めてだった、こんな感情初めてで戸惑った。 「おい!江崎、飲み過ぎだぞ」 いくら飲んでも酔わなかった、否、酔っては居たが朝の綾子の声をはっきりと思い出せた。 「ただいまぁ」 「お帰り、流兄ちゃん」 俺を迎えてくれたのは智だった、いつもの明るい笑顔、俺はその笑顔を見て涙が溢れた。 「流兄ちゃん!?」 智は俺が泣いてるのを見て驚いた様子だった。 「ごめん、智」 俺はどうしようも無くて俺は智に抱きついて泣いた。
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