悪魔の囁き、天使の笑顔

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智は俺を抱き締めてくれて俺は子供の様に智に頭を撫でられた。 「智が女だったらな」 俺は智に抱き締められたまま眠ってしまった。 「流兄、俺許さないから」 眠る前智はそう呟いた気がしたけどあまり覚えて無い。 時間は早く進む、日曜日になるのはあっと言う間だった。 「早く!流兄ちゃん」 水を得た魚の様に智は遊園地に着くとはしゃいで居た。 「智、前見ろよ、危ないぞ」 俺はそんな智を見て少し元気をもらった。 「遊園地何て久々」 「綾子にはあまり似合わないな」 「えっ!酷い、私好きよ」 俺はその声に振り返ると、綾子と部長が歩いて居た。 「流兄ちゃん?」 智は心配そうに俺の腕を掴んだ。 「行こう、智」 俺は見なかった事にする様にその場を離れた。 「もう、楽しんだから帰ろう」 明らかに智が気を使ってる事がわかった。 俺は出来るだけの笑顔を作って智を見た。 「俺、まだあれ乗って無いんだよな、あれ乗ろうぜ」 智に気を使わせた自分が情けなくて俺は出来るだけはしゃいで見せた。 数日後、部長と綾子の婚約が発表された。 幸せそうに笑う綾子、俺は携帯電話の綾子のアドレスを削除した。 「大橋さん来月末までだってぇ、部長羨ましいよな」 同僚は残念そうに呟く、俺はそれに反応できなかった。 「会議、行ってくるわ」 俺はまだ部長と綾子を祝う気持ちになれないまま時間だけが過ぎた。 (最悪) 俺は綾子を忘れられない自分が情けなくて嫌になった。 「流兄ちゃん、まだ起きてたの?」 リビングで缶ビールを片手にして居た俺を遅く帰って来た智が心配そうに見た。 「寝れなくてな、どうした?今日は遅かったな」 時計はもう12時になる、智は俺の前に座り俺に微笑んだ。 「流兄ちゃん、僕、流兄ちゃんを泣かす奴嫌い」 その声はいつもの明るい智の声では無く冷たい感じだった。 「どうした?」 「ううん、何でも無いよ、もう寝るね」 智はそう言って部屋に戻った。 (今日で綾子最後なんだよな) 騒がしいロビーの中心に人が集まってる。 「最低よね」 「部長可哀想」 口々に呟く。 「やっぱりエロい体してるよな」 「遊んでるんだろ」 男も女も呟いてる。 「いやぁぁっ!!見ないで!見ないで!」 泣きながら綾子が中心に走って行く。 (何だよこれ) 俺は人を分けて前に出て愕然とした。 数枚の写真が引き伸ばして貼ってある、全部綾子で裸の写真だった。
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