我が儘な恋人

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暑い夏の昼間に俺は食べたくもないアイスを買う為にコンビニへと来て居た。 (マジムカつく) 俺のイライラは暑さのせいだけじゃ。 「あれ?瀬野くん?」 「加藤さん!」 コンビニで俺に声をかけてくれたのは同じクラスで校内でも美人で有名な加藤佳奈さんだった。 「瀬野くん、どうしたの?買い物?」 加藤さんは天使の笑顔で俺を見た。 (神様は居たんだ) キラキラとした笑顔に俺は暑さもイライラも一気に忘れた。 「うん、アイスを買いに来たんだ」 クラスでも人気で話すら出来ない加藤さんが話かけてくれただけで俺は舞い上がって居た。 「凄い量ね」 コンビニのかごには大量のアイス、加藤さんは少し驚いた様に言った。 「はははっ、近所の子供の分もね」 俺は慌てて嘘を吐いた。 「瀬野くん優しいんだね」 加藤さんが笑顔で俺を見た、俺はその言葉に胸が痛んだ。 (神様ごめんなさい) 「じゃあ、またね」 会計を済ませてコンビニを出た、俺は外に出ても暑さを感じない程に幸せだった。 (またねって、幸せだなぁ神様ありがとう) 俺は幸せだ、そう、家に着くまでは俺は幸せだった。 「遅い」 そう、俺の幸せを壊す一言を呟く。 (神様、俺が何をしたんですか) 人の家のソファーで偉そうに座ってテレビを見る男に俺は一瞬殺意を感じた。 「人の家で偉そうにするな!ほら」 俺はムカつきながらも男に大量のアイスの入った袋を渡した。 「多い」 不満な表情で男が呟く。 (そりゃそうでしょうよ、コンビニのアイス全種類一つづつ買って来たんだからな) 「俺も食うんだよ」 俺はアイスを袋から取り出した。 沈黙だけがある部屋には馴れた。 (一ヶ月前に戻りたい) 一ヶ月前、俺はこの男佐伯翔に不本意ながら助けられた上に弓道部の佐伯の弓を壊してしまった。 『弁償は無理だろ、なら飯作れ』 初めての会話の時から佐伯は呆れるくらい偉そうで苦手だった。 「腹減った」 「はぁ?お前今アイス食っただろ!」 人の家でしかもその家の主に偉そうに言う。 「腹の足しにならねぇ」 偉そうな口調、俺は呆れて溜め息を吐いて立ち上がった。 「はい、はい、作りますよ作れば良いんでしょう」 俺はキッチンへと向かう、一人暮らしを始めてから俺は家事全般をするようになった。 元々嫌いでは無かったから苦にはならなかった、料理も苦手では無い。 (でも、何で男に手料理作らないといけないんだよ)
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