心地良い場所

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「家庭教師?」 「そうだけど、何で?」 俺は足を止めて朝比奈の顔を見た。 「僕なんだ、雪さんに頼まれて今日から家庭教師をする」 俺は少し驚いた、姉貴が俺の為に彼氏に家庭教師を頼んだ事に。 「そうなんだ、家ここ」 俺が玄関に入るなり姉貴が仁王立ちして待って居た。 「あんた、何処に行ってたのよ!昨日、何回も言ったわよね!」 姉貴のお小言は気分を悪くさせる。 「関係無いだろ、朝比奈さん入って」 俺は姉貴を睨んで玄関の外で待つ朝比奈に声をかけた。 「あ、朝比奈さん!?」 姉貴は驚いた様に朝比奈と俺の顔を見た。 「こんにちは、雪さん、道に迷ってしまって」 朝比奈は優しげな声と微笑みで姉貴を見た。 「そうなんですか!私に電話して頂ければお迎えに行きましたのに」 甘えた様な声、気持ちが悪くなる。 「丁度聖くんに会いましたし、でも遅れて申し訳ない」 朝比奈は何処か品のある感じがするのは金持ちだからだろう。 (姉貴に騙されて) 遊びか本気か、姉貴がわからない。 「朝比奈さん行こう」 俺は姉貴の馬鹿げた行動を見て気分が悪くなり朝比奈の腕を掴み二階にある自室へと向かった。 「聖!」 苛ついた姉貴の声に俺は振り向かなかった。 「どうかした?大丈夫かい?」 部屋に入ると俺は朝比奈のから手を離し、ベットに座り込んだ。 「平気」 心配そうに朝比奈は俺の顔を見た。 「そうか、良かった、少し休憩してから始めようか」 にっこりと微笑む朝比奈に俺は少し罪悪感を感じた。 (姉貴に騙されてる) 俺は何故か罪悪感と寂しさを感じた、朝比奈は本当に優しい人で姉貴に騙されてる事が可哀想に感じたからだろう。 [入ります] 化粧をして甘い香水の香り、姉貴は紅茶とケーキを持って来た。 「朝比奈さん、本当にごめんなさい、我が儘を言ってしまって」 姉貴は潤んだ瞳でじっと朝比奈を見た。 「だ、大丈夫ですよ、今から勉強するので、その」 遠回しだが朝比奈は姉貴に部屋から出て行く様に促した。 「そうですね、何かあったら呼んで下さいね」 姉貴はにっこりと笑って部屋から出て行った。 「はぁっ」 朝比奈は溜め息を吐く、少し顔色が悪くなって居る。 「大丈夫か!」 俺は驚いて直ぐに椅子に朝比奈を座らせた。 「すまない、大丈夫」 青い顔で朝比奈は下を向いて呟いた。 「水飲むか?」 「大丈夫、少し空気を入れ換えてもらえませんか?」 俺は直ぐに窓を開けて空気の入れ換えをした。
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