我が儘な恋人

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そんな不満も俺は口には出来ずに黙々と料理を作る。 「おい」 「何だよ」 気がつくと佐伯は俺の後ろに立って居た。 「喉乾いた」 「ほら、これでも飲んで待ってろ」 俺は冷蔵庫からお茶を取り出して佐伯に渡した。 (まったく、もう少し言葉にしろよな) 佐伯は単語で会話をする、だからまともな会話何てあまりした事が無い。 「ほらよ」 俺は佐伯の前に料理を並べた。 「いただきます」 「どうぞ」 食べてる時も当然会話が無い、黙々と食べるだけ。 (普通、感想とか言うだろう、不味いとか美味いとか言えないのか?) 俺は、食べながらも溜め息を吐いた。 「明日、弁当」 「はい?」 またもや単語の会話だ、俺は意味は理解したが溜め息を吐いた。 「だし巻き」 (だし巻き入りの弁当希望かよ) 俺は呆れてまた溜め息を吐いた。 「明日試合か?」 「あぁ」 断る事は出来ない、俺はその後は何も言わなかった。 (良し) やるからには完璧に、俺は朝から弁当を作った。 「そろそろ行くか」 ここから学校まで約30分程で着く。 「佐伯くぅん」 「かっこいい」 あいつの居場所は直ぐにわかる、女の子たちが集まってるからだ。 「瀬野」 そしてあいつは何故か俺を見つける。 「ほら、弁当」 俺は弁当が入った紙袋を佐伯に差し出した。 「待ってろ」 「はぁ?あ!おいっ!」 はっきり言ってこいつが理解出来ない。 (待ってろって) 俺は周りを見回して座れる場所を探した。 (つぅか、目線が痛い) 佐伯と話した後は嫌でも注目される。 (女の子に睨まれるのは辛いな) 佐伯は女の子にモテる、それは男の俺からしてはかなり羨ましく、ムカつく程にだ。 (顔だけは良いからな) 俺は溜め息を吐いて女の子を魅了する、佐伯を見た。 「行くぞ」 佐伯は真っ直ぐ俺の所に来て一言だけ言った。 「おい」 「何だよ?」 佐伯は立ち止まって手を差し出した。 「弁当」 (意味不明) 俺は佐伯に袋を渡した、それを受け取ると佐伯はまた歩きだした。 俺は溜め息を吐いてから佐伯の後ろを歩いた。 (つぅか何これ?彼氏が彼女の荷物持つ感じ?否、違うし!それじゃ俺女?いやいや、そんな事あり得ないつぅの!) 俺はそんな事を考えて歩いて居て佐伯が止まった事さえ気づかなかった。 「バカ!前見て歩け!」 佐伯に腕を掴まれて俺は目の前の壁にやっと気づいた。 「うわぁ、やべぇ確実にぶつかってたよ」
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