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俺は目の前の壁に驚いてから佐伯の顔を見た。
(助けてくれたんだよな)
俺が顔を見てる事に気づいて佐伯は手を離した。
「間抜け」
「ま、間抜けぇ?うるせぇ少し考え事してたんだよ!」
俺はムカつきながら佐伯の前に座った。
佐伯は相変わらず黙々と食べてる。
(間抜けって何だよ、お礼言いそうになった)
俺も黙々と食べた、昼からも練習なのか、佐伯は食べた後直ぐに立ち上がった。
「蓮根のはさみ揚げ」
「はいはい」
単語だけど会話にも馴れた、俺は軽く返事をすると佐伯はもう歩いて居た。
(何だかなぁ)
どうしてあいつが女の子に人気なのか理解出来ない、顔は良いけど我が儘だしまともに会話も出来ない、俺には理解出来ない。
「瀬野くん?」
「加藤さん」
夏休みだと言うのにまた加藤さんに会えた、俺だけはそれだけで幸せな気持ちになった。
(神様!ありがとう)
にこやかに微笑んで加藤さんが近づいて来た。
「瀬野くん応援?」
にっこりと微笑む加藤さんは俺に癒しをくれた。
「うん、まぁ、加藤さんは?美術部で?」
加藤さんは美術部に在籍してる、加藤さん目当てに入部した男子も多い。
「コンクールが近いの、瀬野くん、佐伯くんと仲が良いのね」
加藤さんの口から佐伯の名前を聞いただけでムカつく。
(あいつと仲が良いって思われてるのもムカつくけど加藤さんがあいつの名前呼ぶのもムカつくな)
俺がそんな事を考えてる何て知らずに加藤さんはにこやかに微笑んだ。
「仲が良いかぁ」
俺は仲が良いとは思わない、どちらかと言えば俺はパシリだ、弁当を作って、持って来て、また作る。
「だって佐伯くんさっきからこっち見てるよ、ヤキモチかな」
楽しそうに加藤さんが指を指す方を見ると佐伯が立って居た。
「ヤキモチってあり得ないよ」
「そうかな、あっ、もう行かないとまたね」
そう言って加藤さんは校舎へと入って言った。
(ヤキモチって、恋人じゃあるまいし)
俺は買い物を済ませて家に向かった。
明日の弁当の材料と夕食の材料を買って家に帰る。
「遅い」
家に着くと佐伯が玄関の前に座って居た。
「何で?」
俺は驚きのあまり荷物を落としそうになった。
「腹減った」
佐伯は一言不満そうに溜め息を吐いた。
「そうですか」
俺は呆れて鍵を開けた。
佐伯は入るなり自分の家の様にソファーに座った。
(夜はあいつ来ないのに何しに来たんだよ)
俺は食料を冷蔵庫に入れながら考えた。
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