我が儘な恋人

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「飯」 その一言で俺は考えるのをやめた。 「今作るよ」 俺は溜め息を吐いて作り始めた。 (何だ、これ?新婚さんっぽくねぇか?否、新婚より熟年夫婦?ヤバイ) 俺は馬鹿みたい事を考えながらも料理を作る。 「いっ!」 どうでも良い事を考えてたせいで包丁で指を切った。 「どうした?」 俺の声を聞いて佐伯が来た。 「ちょっと切っただけだ」 俺は流れる血を見て溜め息を吐いた。 「えっ!佐伯!?」 佐伯は俺の手を掴み指を舐めた。 「な、な、何してんだよ!」 俺は驚きと恥ずかしさで顔を真っ赤にした。 「救急箱どこだ?」 「そこ」 俺の戸惑いを無視して佐伯は手当てをしてくれた。 「気をつけろ」 「ありがとう」 俺は頭が真っ白になったまま食事の用意をした。 「いただきます」 佐伯は何も気にせずにいつもの様に黙々と食べて帰った。 (ビックリしただけ) 俺は胸のドキドキを自分の納得出来る様に説明した。 俺は毎日、佐伯に弁当を届けた。 その度に女の子たちの痛い目線を感じた。 「先生と話がある」 「了解いつもの場所に行ってるよ」 俺は馴れた様に人があまり来ない裏庭に向かう。 (可愛い女の子なら嬉しいのに・・・・加藤さん見たいな子なら) 高嶺の花、俺は考えただけで諦めのため息が出た。 「瀬野くん良いかしら?」 数人の女の子、見たことのある女の子たちだ。 (佐伯のファンの子) 俺はその顔触れに嫌な予感がして居た。 「佐伯くんにお弁当作るのやめてくれない」 予想通りの台詞、俺は溜め息を吐いた。 「あなたが佐伯くんにお弁当を作るから私たちのを受け取ってもらえないの」 悔しそうな顔、俺にはどうにも出来ない。 「聞いてるの!」 女の子の一人が弁当が入ってる袋を俺から取り上げ様とした勢いで袋が地面に落ちた。 (ヤバっ) 「何してる」 冷たい口調、佐伯はいつもと違う空気で現れた。 女の子たちは一気に固まって少し怯えて居た。 「佐伯くん」 佐伯は何も言わず俺を見て落ちた袋を見た。 「何してた」 冷たい口調といつもと違う冷たい目線に女の子たちは確実に怯えてる。 「あ、俺が悪いんだ、ぼぉとして彼女にぶつかって」 俺は慌てて佐伯と女の子の間に入った。 「瀬野」 佐伯はいつもとまったく違う口調のまま俺を呼んだ。 俺も怖かったが、その場から動けずに居た。 怯えてる女の子たちをほっとく訳にはいかなかった。
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