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「こいつに文句あるなら俺に言え、今度何かあったら容赦しない」
冷たい口調で俺の後ろに居る女の子たちに言う。
「はい」
女の子たちは震えて返事をしてその場から走り去った、今まで無口で何も言わずに居た佐伯だからこそ怖かったんだろう。
(可哀想に)
俺は走り去る女の子たちの後ろ姿を見つめた。
「怪我は無いか?」
いつもの口調、佐伯は俺の前に立ち、俺の頬に触れた。
「あんな言い方しなくても良いだろ、女の子たちが可哀想だ」
俺は佐伯の手を振り払い落ちた弁当を片付け始めた。
「お前はあいつらの味方をするのか?」
俺を見下ろしながら佐伯が呟く、俺は佐伯の顔が見れなかった。
「味方とかじゃない、あの子たちはお前の事が好きなのにあんな言い方は酷いだろ」
傷つく、怖くて震えてた彼女たちの顔を思い出すだけで俺まで何故か胸が痛んだ。
「瀬野」
佐伯が俺の名前を呼んで俺の前に座った。
「これ、もう駄目だな、昼飯、前のコンビニで買って来る」
俺は少し、どうかしてた、落とされた弁当を拾いながら涙が出そうだった。
(女々しいよな)
佐伯が拾い口に入れた。
「なっ、お前汚いだろ」
「美味いよ」
佐伯が初めて感想を口にした、俺は驚いて少しの間何も言えなかったけど嬉しくなってしまった。
「そうか、良かった」
「瀬野」
いつも黙々と食べてるだけの佐伯の感想に俺は嬉しくて笑って居た。
「でも、これは捨てるからな!腹壊す」
俺は少し残念に思いながら弁当をゴミ箱に捨てた。
(今日のは自信作だったんだけどな)
俺と佐伯は学校の前にあるコンビニで弁当を食べた。
「んじゃ、帰るから」
俺は弁当を食べ終わるといつもの様に帰ろうとした。
「見て行け」
「はぁ?何で?」
「良いから見て行け」
俺は溜め息を吐いて頷いた。
「仕方ねぇな、一回くらい見てやるよ」
俺は良く見える場所へと向かった。
周りには女の子たち、さっきの女の子たちの姿が見えなかった。
(帰ったのかあの子たち)
俺は少し、寂しくなった。
俺のせいで彼女たちは傷つき怯えて居た。
(今度会った時謝らないとな)
「きゃぁぁぁっ!!」
佐伯の姿を見て女の子たちが歓声を上げる。
(凄い人気だな)
まるでアイドルでも見た様な歓声に驚いた。
「佐伯くんかっこいい」
他校の制服の女の子も居た、それだけ佐伯が人気な事に俺は正直今まで知らなかった。
(これだけ人気なら彼女作れば良いのに)
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