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俺は溜め息を吐いて佐伯の姿を見た。
きりっとした姿、真っ直ぐ的を見つめる目、弓を射る姿、それは男の俺から見ても見入ってしまう程に綺麗だった。
「カッコイイ!!って思ったでしょう?」
にっこりと笑って俺の横に加藤さんが立って居た。
「か、加藤さん!?な、何言ってるんだ」
俺は驚いて加藤さんを見ると加藤さんはにっこりと微笑んだ。
「瀬野くん、はい!受け取ってくれる?」
加藤さんが一枚の封筒を差し出した。
「これは?」
「ん?秘密、それ佐伯くんに渡して欲しいの」
にっこりと笑う加藤さんの顔を見て俺は胸が痛くなった。
「佐伯に?何で俺が?」
本当は断りたかった、好きな女の子に頼まれて。
「ダメかな?」
少し悲しそうな表情で加藤さんが俺を見た。
「わかった」
俺は加藤さんから手紙を受け取った。
「瀬野!」
俺は突然呼ばれて驚いた。
「またね、瀬野くん」
俺は、加藤さんの後ろ姿を見つめて居た。
「何かされたのか?」
加藤さんが行って直ぐに佐伯が来た。
「べ、別に」
俺は何故か封筒を隠してしまった。
「待ってろ」
少しして佐伯は着替えて来た。
少し機嫌が悪い様に見えた。
(今日の弁当怒ってるのか!そりゃ嘘吐いたのは俺だけどよ、怒られる理由ねぇよな)
俺は機嫌の悪い佐伯を横目で見たが佐伯は何も言わずに歩いて居る。
「あ、あのさ、明日の弁当何か注文あるか?」
俺は何故か今日の沈黙は堪えられなかった。
「もう来なくて良い」
「え?」
佐伯の言葉に俺は驚いた。
(今、来なくて良いって言ったよな)
俺は佐伯の顔を見た、やっぱり機嫌が悪い。
「お前が来ると迷惑だ」
何処と無く冷たい感じがした、俺は何故か泣きたい気持ちになった。
(かっこわりぃ)
俺は佐伯を見る事が出来なかった。
「な、何だぁそりゃ助かる毎日弁当作るの面倒だったんだよ」
泣きそうな気持ちを隠す様に俺は強がりを言った。
「晩飯は食うから用意しろよ」
「はい?」
俺はまた佐伯の言葉に驚いた。
「来なくて良い、俺が行くから」
俺は溜め息を吐いた、偉そうに言う佐伯の言葉に少し安心をした。
(って!何俺ホッとしてんだよ!)
でも俺はホッとしたのは確かだった。
次の日から佐伯は部活が終わると毎日来た。
会話は無かったが、俺は料理を作り佐伯を待って居た。
「瀬野くん」
加藤さんが声をかけてくれた。
「加藤さん」
「凄い材料ね」
加藤さんはスーパーのかごを見て驚いて居た。
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