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夜の散歩。
育ての親である太陽が隠れ、寝顔を見守る白い月と星の見える頃。
濃密で深い空気が取り込まれている。
吐く息は辺りを染めている白と変わらないくらいの濃度をしている。
そんな頃にクリスはジャスティを連れ出して城の周りを散策する。
時には美しい花を手折ったり、夜道で追いかけっこをしたりとまるで昼間のように二人で遊ぶ。
二人の足取りはしっかりとしていてもつれることも、よろけることも無い。
クリスには細々とした月の明かりだけでもジャスティの息を弾ませる様子や、無邪気な笑顔、帰ろうといった時の拗ねた様子まで克明に、ごく容易く見ることが出来た。
ジャスティは追いかけてきたクリスにわざと捕まり、くすぐったそうに笑う。
「ねえ、今日は何か楽しいことがあるかしら?」
「さあ?どうだろうね……。あ、でも、今日のお昼は外が騒がしかったようだから、誰かの落し物くらいはあるかもしれないね」
「ほんとう?クリス」
「さあねえ……」
笑いながら何処までもはぐらかすクリスにジャスティはしっかりと捕まえられていた手を離す。そして頬をぷうと膨らませてお気に入りのウサギの耳を模した帽子を深く被りなおした。
「もうっ、クリスのいじわる!!」
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