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黒いブーツと赤い靴の向く先にあるのはなんてことは無い、この周辺になら何処にでも自生している木。
それは春には純白の花を、夏には青々とした葉を、秋には赤く染まった葉を落とす季節の象徴のような木だ。
それも今は葉も全て落ちて雪が純白の花の代わりをしている。
しかし、緑色の双眸は木の下のものに注がれ細められた。
芝居がかったような大げさなため息がクリスの口から出る。
そのあとから遅ればせながら白い息がただよい、消えた。
「ああ、ジャスティ、僕の負けだ」
「?……何よ」
「ほら、見てごらん……」
クリスは黒い皮の手袋をはめた手で木の下にある何かを指す。
ジャスティは一度クリスを見上げてから訝しげに眉根を寄せてそれを眺める。
しかし、身長が足りないのか、或いはクリスほどに夜目はきかないのか、クリスの示すものがどうして自分の勝ちの証明なのかが分らなかった。
「これは……落し物と呼んでも良いのかな?」
どうやってでも見てやろうと背伸びまで始めたジャスティをクリスは愛情をもって見つめ、歌うように節をつけてもう一度同じ場所をさす。
ためらいなど一切無く木の下に近寄ったクリスとジャスティは雪が被さっているであろう物体を掘り起こす。
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