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 雪はそれに積もったばかりらしい。案外柔らかいそれはすぐにさらさらと手をすり抜けていく。 「ねえ、クリス」 「待って、もうちょっとだから……」  薄手でも手袋は全く寒さを感じさせない。もっともクリスは寒さでどうにかなるような身体でもなかったが……。  サクサクと雪をかき分けていた手がようやく止まり、ジャスティにもそれが見えるように体を少しわきへ避ける。 「ほら、ジャスティ……これでわかるな?」  肩越しに覗き込んでクリスの指すものをよくよく見たジャスティは目を輝かせて嬉しそうに笑った。  そして、嬉しさを押し殺した囁き声がクリスの耳をくすぐる。 「お客様、ね」 「うん。そうだね、お客様だ。さて、じゃあ二人で運ぼうか」 「足を持って良い?」 「うん。離すんじゃないよ」  大量に被さっていた雪を避けてもなお、それは大きく、クリスの手に余るほどではないが、いくら小さくても協力者が居たほうが良いことだけは確かだった。  クリスはジャスティがしっかりと足を持ったのを確認してから持ちやすい腕の辺りを両手で掴み、ズルズルと来た方向へと引きずり始める。  雪の上を滑るソリのような扱いを受けているそれは結局は元のように白くなっていく。  それでも、振り返ると元いた木の下にはしっかりと残っている色があった。  辺りを染めていたそれは血。  赤い、鮮血だ。  そして、拾い物は息をしていた。  ……つまり、生きた人間だった。
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