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明美が歩いているのは民家の塀が辺りを囲む住宅地。
人の姿はなく。いや、明美とそしてもう一人。前方を歩く人物。
まだ夏が終わったばかりだと言うのに厚手の黒いコートに黒のハットを被った人物。よろよろと歩くその姿に明美はなんとなく見覚えがあった。
「あいつ、たしか……」
最初に匂いを感じたあの街中で明美はその人物を見た、気がしたのだ。
明美は思い切ってその人物に近づいて見る。
一本近づくたびに匂いはその強さをまして行く。
間違いなく匂いはその男から香っていた。
明美も一応女子高生である。いつも奇怪な行動をとる明美でもそれなりに身だしなみには気を使う。
しかし、明美の知識の中にスティックノリみたいな匂いのする香水や化粧品なんて聞いたことがない。
だから気になったのだ。
目の前を歩く人物が。
勿論、ノリの製造工場で働いている人間と言う可能性もあるが、この近くにノリ工場はない。
一定の距離をあけ、まるで探偵のように謎の人物の後をつける明美。
やがて謎の人物がある場所に辿り着いた。
「ここは……」
そこは、昨日の夜、桜と二人で来た裏山だった。
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