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朝陽がカーテンの隙間から木漏れ日となり、明美は眩しさで目が覚めた。
いつの間に眠ってしまったのだろう?
霞がかかったような、ぼんやりとした頭で明美は昨夜のことを思い出す。
布団にくるまり、「男」に怯えていたのは覚えている。
どうやら、そのまま眠ってしまったようだ。
なんとなく憂鬱なまま体を起こし、学校に向かう準備を始める。
いつもなら桜から学校に行く前にメールが届くのだが、今日はそれがない。
不思議に思ったが、明美にはそれが助かった。
昨日の今日である。一晩眠れば忘れれるような出来事ではない。
家を出た明美はビクビクしながら学校までの道を歩いた。
いつあの男が現れないとも限らない。幸い、あの匂いは一切感じられない。
いつもなら気にもしない通学路が今日はやけに長く感じられた。
学校が見えてくるとようやく明美の中にも安堵感が生まれた。
急ぎ足で校舎に向かう明美。しかし、何かが気になった。
何が?と問われれば明美自身にも分からない何かが……。
ふと辺りを見回せば、校庭の片隅の鳥小屋。その前に一人、ポツンと桜が立っていた。
桜はただひたらすら、何をするわけでもなく鳥小屋の前に立っていた。それこそ微動だにせず。
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