一章~星の欠片~

6/7
前へ
/26ページ
次へ
花火の先から放たれる色とりどりの光を見て、桜は目を輝かせる。 「桜、花火したことないの?」 桜はこくこく頷く。 今どき花火をしたことがないなんて、小さいころから花火が大好きな明美には少し信じられなかった。 花火の火が消えると桜は少し残念そうに、しかしすぐにまた新しい手持ち花火を明美に渡す。そして、また放たれる光に目を輝かせた。 「それは最後にやるのよ」 いろいろな種類の花火を明美に手渡す桜。そんな桜が明美に渡したのは線香花火。 桜は首をかしげて、明美に線香花火を差し出す。 「わかったわよ」 その瞳の輝きに負け、明美は線香花火を二本とり、一本を桜に渡す。 花火を渡されたことに少し驚いた桜だったが、線香花火の柔らかな光が気に入ったのか、自分でも火をつける。 暫し、微かな音と柔らかな光が辺りを包み込む。 「あ~あ……落ちちゃった」 先に明美の線香花火がぽとりと地面に落ちてしまった。 桜の方はと言うとまだまだ元気にパチパチと光を放っていた。 もとより明美は線香花火が嫌い、と言う訳でないがあまりに好きではなかった。他の手持ち花火と違い、下手をするとすぐに落ちてしまうのが自分には合わないと思っている。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加