甲野恭一

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窓から射す光。 教室が鮮やかな朱に染まっている。 傾いた陽に影がのびる。 びりびりに破れた教科書やノート。 たくさんの倒れた椅子。 真っ二つの机。 床に広がる、射し込む朱より更に濃い深紅の模様。 私の頭は真っ白だ。 こんなの、普通にあるものじゃないと思っていた。 あっても私の身近には起きないだろうと勝手に思っていた。 そんな光景を目の前にして、私は動けなくなっていた。 「……っ」 うずくまる男の先生はガタガタと震えている。 呻き声が微かに聞こえる。 その前には制服の男子生徒が立っていて、怯えている先生を見下している。 「な…にして…」 唖然とした私は知らずのうちに声を出してしまった。 ゆっくりと、男子生徒が私の方を見た。 艶のある短めの黒髪。 深い色の…まるで、彼の足元に広がる紅のような色の眼。 その人の鋭い視線は、間違いなく私に向けられている。 「……何、きみ」 低く透き通った声が私に向けられる。 たったそれだけなのに、押し潰されるような感覚がおそってきて、私は身震いした。 「よくも僕の邪魔してくれたね」 「ぇ…?」 男の人はうずくまる人を気にせず、こっちに歩いてくる。 怖い…! 「覚悟はできてるよね」 私の横を過ぎるとき、小さい声で彼は言った。 何、それ? どういうこと…?
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