プロローグ

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「……と言いますと?」 彼女は思わず聞き返した。 すると、今度は男の妻が口を開く。 「とにかく、娘に会って下さい。貴女なら、それで全て理解して頂けると思います」 「……」 核心を告げない答えに、女の顔はすっきり晴れなかった。 しかも“会う”という事は、彼女の性格上、“依頼を引き受ける”という事に陥る可能性がある。 (……だから怒られるんだよなぁ) 彼女の不安と困惑を織り混ぜた表情を見て、その夫婦は再び、更に深く頭を下げた。 「お願いします!! どうか娘を……娘を、救って下さい…!!」 「お願いします…!!」 女性の声は既に涙を堪えて掠れていた。 「ん~……」 長い長い沈黙の後、 「分かりました。とりあえずお子さんに会ってみます」 眉をひそめ、少し自信なさげに彼女が言った。 「あ…、ありがとうございます!!」 弱めの発言。 それでも二人はそれに強く感謝した。 「よかった、これで……」 そう言って、夫人は目頭をハンカチで押さえる。 男はそんな妻の背中を何度も擦って共に喜んだ。
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