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真っ赤なドレスを着て、首元には真珠のアクセサリー
美しいブロンドの髪は首の上で綺麗な花のように結いあげ、ほのかに香る薔薇の香水を軽くつける。
「エチェカ様、では参りましょうか。」
「ええ、解ったわ。」
エチェカはゆったりと椅子から立ち上がり扉の方へ向かう。
「ねぇ、ロサ…今日は……クラーツ殿はいらしゃるの?」
「ふふふ、エチェカ様はクラーツ殿の事になると一段とお美しくなられますね。」
「もうっ!ロサったら、質問の答えになってないわよ!」
エチェカの世話人のロサの言葉に顔を真っ赤にして反論する。
それに反してロサは終始笑顔で長い廊下を進んでゆく。
今日は、アビオール家の風習の1つでもある家族全員そろっての食事会の日だった。
アビオール家は貴族の中でも上流貴族であったが、その点ほぼ頻繁に行われる夜会などのため家族全員が顔を合わせるのは週に1、2回程度である。
なので、先代の当主が月に一度満月の夜に家族だけの夜会を開き内部分裂を防ごうとして始めたものであった。
そこには、優秀な家臣たちも集まるのが風習の一つである。
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