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『ちょっと良い事があっただけ』
何を言ったらいいか解らない。僕にとっては変化の無い飽きた病院生活に、突如舞い込んだ異変だからね。良い意味で。
響「…そう、良かったわね」
どういう意味での良かったのだろうか?
響「だってこの間までの奏なんて完全に上の空だったから…まるで廃人の様にね」
そりゃこんな所に長年入っていれば廃れるのも仕方ない。退屈な時間に自由を殺されてるようなもんだから。
自由に動き回れる響達を羨ましく思う。僕もこんな身体じゃ無ければ律達と馬鹿をやっているだろうな。
憶測だけど僕に残された時間は余り残っていないと思っている。
家族はいつか良くなるとは言っているが、自分の事だからよく解る。両親や姉の取り繕った笑顔や気遣いが、僕には苦痛に感じてならない。
律や響は僕の病気の事を知っているどうかは定かでは無い。
知っていて明るく振る舞っているのか、本当に知らないのか…。
だけどそんな家族や幼馴染みの気遣いを無駄にしたくは無い。
僕の為にしていてくれているのだから…。
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