翼をもがれた蒼い鳥

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同じ景色でも違う角度から見ればまた別の顔を見せる。様々な彩りを持つ花の様に。 僕は黄金色に染まった空を見る為に、屋上に続く階段を上っていた。 ここの病院では基本的に屋上の扉の施錠はされていない。 いくら綺麗で設備の整った病院でも密閉された空間の中では息が詰まると言う事で誰でも上がれる様にとの院長の考慮らしい。僕の担当医から聞いた話だ。 屋上のドアを開き身を乗り出した。 空を見上げると空は琥珀色に染まるドームの様だった。それに呼応するかのように雲も茜色に地平線の方では間もなく日没なのか橙と紫で空が混じり染まっていた。 周囲には人が誤って落ちない様にしっかりとフェンスが張り巡らせている。 人が座れる様にとベンチも置かれている。 (やっぱり外は空気がいいな…) 軽く深呼吸して辺りを見渡した。 夕暮れ時で季節も秋のせいか人は看護婦含んでも二、三人しか居なかった。  
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