翼をもがれた蒼い鳥

8/14

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
さて、そろそろ部屋に戻るとするかな。肌寒くなってきたし。 『じゃあ葵ちゃん、僕部屋に戻るよ』 ベンチから腰を上げ、お尻に付いた埃を掃った。 葵「あっ…はい」 『…そういえば葵ちゃん。いつもここに居るの?』 葵「…はい、大体は」 葵ちゃんは僕を見上げながらそう言った。 夕日に照らされ赤みを帯びた頬に、上目使いをしている彼女を見て僕の鼓動が早くなった。 ん~何だかこっちが照れそうだ。 『また…来ていいかな?』 入院生活は暇だからね話し相手が一人でも居るだけで大分変わる。 会話を成立させる自信は余り無いけどね。 葵「……別にいいですよ」 何だか釈然としない物の言い方だけど、まぁいいや。 『うん、ありがと。じゃあ…また』 そう言って僕は別れを告げ、この場を去った。 葵(……変わった人) 葵は奏が出て行ったドアを見続けていた。彼女自身も気付いていないだろう、自然と笑みが零れていた。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加