8月20日

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顔をあげると、小さな薬屋があった。 今の時代に似つかわしくない、こじんまりとした薬屋。 シャッターは閉めてあり、営業しているのかどうかも怪しいくらいだ。 薬屋の前の、緑色のかえるが雨に濡れて笑っていた。 何が楽しいのあんたは。 おい、かえる。 薬屋のかえる。 何を笑っていいるの? 私を笑っているの? 哀れんでいるの? ならばあんたに問う。 私はなんだ? おい、かえる。 本当はかえるですらない、緑のつるつる。 おい、つるつる。 あんたと私の違いは何だ。 かえるが ケロケロケロッと 笑う声が聞こえて、わたしはとっさに やつを蹴りあげた。 ずぶぬれのかえる。 ずぶぬれの私。 とっさに赤がみたいと思いたち、化粧ポーチから、カミソリを取り出した瞬間、 私は、彼と、出会った
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