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「俺、彼女いるんだ」
「うん。それで?」
「電話番号、教えて?」
「いいよ」
「連絡は、俺からするから」
「うん」
「俺のこと、好きになった?」
「ならないよ。タイプじゃないし。けど、エッチはよかった」
「んじゃ、セフレになる?」
「いいよ。お互い気が向いたら、またしよう」
「ごめん」
「何が」
「なんとなく」
「じゃあ、私もごめん」
「何が?」
「なんとなく」
謝られるのは好きじゃない。
番号を交換し、私は車を降りた。
エイタはすぐに車でさって行った。
番号を交換せずに、最後の会話をせずに、今日が終われば、エイタは私の中で、たぶん小説になった。
そのくらい彼とすごした今夜は、私の中で完璧だった。
だけど、私は完璧な思い出よりも、現実の生身の彼がもっとほしいと思った。
たぶん、あの男は最低の男だ。
そして、困ったことに、私は最低な男がわりと好きだ。
たぶん傷つく。
本当は怖い。
けど、幸せな誕生日だった。
家に帰ると、妹が準備したバースデーケーキが冷蔵庫に入っていた。
ハッピーバースデー
お姉ちゃん
23歳、おめでとう。
また、涙が出た。
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